「うちの商品は業界を問わず、どんな人にも使えます」。この言葉を聞くと、私はいつも少し心配になります。裏を返せば、誰に届けたいかを決められていない、ということでもあるからです。全員を顧客にしようとすると、かえって誰からも「自分のための商品だ」と思ってもらえない位置に立たされます。とくに中小企業は、限られた予算と人手で戦うので、狙いを絞るかどうかが成果を大きく左右します。
ターゲティングは「誰に売らないか」を決めること
多くの会社は「どんな顧客を獲得するか」だけを考えます。ですが、実際に効いてくるのは、その反対、「どんな顧客にはリソースを使わないか」を決めることです。ここが曖昧なままだと、営業は「とりあえず全部対応」になり、結局どの顧客の課題も深くは解けません。数は来るのに質が低い、という状態です。
捨てる基準は、次のような観点で考えると整理しやすくなります。
| 基準 | 問い | 見方 |
|---|---|---|
| 収益性 | 単価や継続性はあるか | 契約単価と獲得コストのバランス |
| 対話性 | 課題を共有できるか | 営業として話が通じやすいか |
| 相性 | 自社の考え方とずれていないか | 価値観が合うか |
ターゲットを決めるとは、選ぶことであると同時に、捨てることです。この線引きの厳しさが、結果的に会社の利益を守ります。
中小企業は、ニッチに集中する
大手は、大きな母数にわずかな割合で刺さればいい戦い方ができます。中小企業は逆で、小さな母数に高い割合で刺さる戦い方が向いています。この違いを理解せずにマス的な露出を狙うと、露出は増えても問い合わせは増えない、という残念な結果になりがちです。
マス的な広告は認知の広がりは得られますが、コストがかさみCV率は下がります。ニッチに絞った検索や広告は、数は取りにくい代わりに、CV率が高く差別化もしやすい。中小企業にとっては、数は少なくても質の高い問い合わせが積み上がるほうが、たいてい売上につながります。数が減ることへの不安はありますが、そこで踏みとどまれるかどうかが分かれ目です。
理想顧客は「実在する成功顧客」から逆算する
理想の顧客像を、想像だけで作る会社は多いです。ですがそれでは浅くなります。精度を上げたいなら、実際に良い関係を築けた顧客を土台にします。「35歳・製造業・従業員30名」といった架空のペルソナより、「実際に契約して、うまくいっているあの会社」を起点にするほうが、はるかに解像度が高くなります。
やり方はシンプルです。まず、価格ではなく信頼で選んでくれた、いちばん良い実績の顧客を思い浮かべます。次に、その顧客がなぜ自社を選んだのか、最初の課題は何で、他社と比べたときの決め手は何だったかを深掘りします。そして、その顧客が抱えていた迷いを一般化して、FAQや事例、考え方を伝えるページにしていきます。理想の顧客像は、理想の情報からではなく、実際の成功から作る。これが出発点です。
成果は「ニッチ経由のCV」で測る
ニッチ施策を、サイト全体の平均で評価すると、必ず失敗しているように見えます。母数が小さいからです。見るべきは、狙ったニッチ経由のCVだけです。ブログ全体のCV率が低くても、狙った層のキーワード経由のCV率が高ければ、その記事は勝っています。
あわせて、問い合わせの中身も見てください。「価格が安いから」という問い合わせは狙いの外、「この課題を解決したい」という問い合わせは狙いの内。評価の物差しを、施策の意図に合わせて変えることが大切です。全体指標だけで判断すると、正しい絞り込みほど「効いていない」と誤解してしまいます。
理想でない問い合わせに、NOと言えるか
ターゲティングの核心は、突き詰めるとここに行き着きます。売上が惜しくても、理想でない顧客には無理に売らない。そう決められる会社だけが、値引き競争ではなく、信頼で選ばれる市場に立てます。低単価で相性の合わない顧客は、対応にコストがかかり、続きにくい。目先の一件を追うより、合う顧客に絞るほうが、長い目で見た利益は安定します。
Webサイト全体を、理想顧客に合わせる
ターゲティングの仕上げは、広告の配信設定ではありません。Webサイト全体が理想顧客に向けて作られている状態にすることです。
まずファーストビューのメッセージを具体的にします。「さまざまな業種に対応」ではなく、狙う相手の悩みを言葉にする。ターゲット外の人が見て「自分には関係ない」と離れてくれるのは、絞り込みが効いている証拠です。次に、事例ページを狙う業種にそろえます。十業種の事例を一つずつ載せるより、狙う業種の事例を厚く載せるほうが、「自社と同じ規模・業種が使っている」という安心につながり、検討が進みます。キーワードも同じで、広い言葉ではなく、狙う相手が使う具体的な言葉を選ぶ。検索数は小さくても、そこからのCVは質が高くなります。
ここで避けたいのは、中途半端に絞ることです。絞るなら徹底する。半端に絞ると、ニッチ層には響かず、マス層にも届かない、いちばん良くない状態になります。「もう少し広げたい」と言いたくなる気持ちは分かりますが、そこで踏みとどまれるかが勝負どころです。最初の設定が完璧である必要はありません。四半期ごとに見直して、少しずつ精度を上げていけば十分です。
自社に問う3つのこと
最後に、絞り込みを決めるための三つの問いです。どんな顧客との仕事は、もうしたくないか。どんな顧客なら、多少無理をしてでも力になりたいと思えるか。そして、その違いをWebサイトで明示できているか。三つ目がいちばん大事です。理想の顧客像を社内では語れても、サイトに表れていない会社は多い。そうなると、本来の相手ではない人も来てしまい、合わない対応に時間を取られます。「こういう方のための会社です」とサイトで示せていれば、自然と合う人が集まるようになります。
絞り込みは妥協ではなく、限られたリソースをいちばん効かせるための戦略的な選択です。全体の設計から見直したい場合は中小企業のWeb戦略を、コンテンツの作り方を整えたい場合は記事を量産しても成果が出ない理由もあわせてご覧ください。
誰に絞るべきか、どうサイトに反映するかで迷う場合は、ウノマスの無料相談もご利用ください。
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