
「導線を改善したページのアクセスが伸びているので、ホームからの流入が増えているはずです」。BtoB企業の会員サイトを支援していると、こうした肌感覚の報告を担当者からいただく場面がよくあります。数字を見る前の第一印象は、たいてい間違っていません。ただ、間違っていない代わりに「半分だけ当たっている」ことも少なくありません。
今回ご紹介するのは、あるBtoB企業(専門性の高い商材を扱う企業で、医療機器や産業機械のように指名検索されやすい業界を想定していただくとイメージしやすいと思います)の会員サイトで、担当者から出た「ホームより検索からの流入の方が多いのではないか」という所感を、GA4とサーチコンソールの2つのデータで実際に確認した実務メモです。
30秒で現状を整理
自社サイトの流入経路、感覚と数字は合っていますか?
「ホームからの流入が多いはず」「検索対策は十分できている」といった感覚を、AIによる評価も交えて30秒で確認できます。
「ホームより検索の方が多いのでは」という所感の背景
このサイトでは、以前にホームページ上のナビゲーション導線を見直し、特定の商材ページへの誘導を強化する改修を行っていました。改修から数か月が経ち、対象ページのアクセス自体は増えていたのですが、クライアント担当者から次のような所感が出てきました。
「導線を増やしたのに、結果的には製品名で検索して直接ページに来ている人の方が多い気がする」。これは担当者自身の実感であり、この時点ではデータによる裏付けはまだありませんでした。感覚として述べられたものを、そのまま報告に使うわけにはいきません。ここから、確認する側の作業が始まります。
まず確認したのは「どこから来ているか」の内訳
最初に見たのは、GA4のチャネル別流入内訳です。対象ページ群に絞り、約4か月間のトラフィックをチャネル別に集計しました。
対象ページ群のチャネル別流入(概算)
約4か月間の集計・構成比はいずれも同水準で推移
| チャネル | 構成比(概算) |
|---|---|
| 自然検索(オーガニック検索) | 8〜9割前後 |
| 直接アクセス | 1割弱 |
| 参照元(ホームを含むリファラル) | 数%程度 |
ポイント:ホームを参照元とする流入は全体のごく一部にとどまり、自然検索が大半を占めていました。導線改善の効果を「ホーム経由の増加」として見ようとすると、実態を見誤る可能性がある構成比です。
自然検索が全体の8〜9割を占め、ホームを参照元とする流入は全体の1%にも届かない水準でした。この時点で「ホームより検索の方が多い」という所感は、少なくとも入口の内訳としては裏付けられたことになります。ただし、ここで確認できたのは「検索から来ている」という事実だけです。何を検索して来ているのかは、まだ分かっていません。
次に確認したのは「何で検索されているか」
チャネル内訳だけでは、「対策してきたキーワードで見つかっている」のか「たまたま指名検索で来ている」のかを区別できません。ここでサーチコンソールを開き、対象ページ群をクリック数の多い順に並べ、それぞれのページで実際にどのようなクエリで表示・クリックされているかを確認しました。
クリック数が多いページの大半で、上位クエリの中心は「自社ブランド名を含む語」または「自社ブランド名+商材カテゴリ名」の組み合わせでした。つまり、検索エンジンの評価によって偶然見つかっているというより、すでに製品名を知っているユーザーが指名検索でたどり着いているという構図です。
分かったこと1:ページによって検索される言葉の性格が違う
上位クエリを1ページずつ見ていく中で、大半のページとは傾向が異なるページが1つ見つかりました。そのページだけは、上位クエリの中心が製品名ではなく、症状名や用途名に近い言葉でした。他のページが「すでに製品名を知っている人」に見つかっているのに対し、そのページは「まだ製品名を知らず、悩みや用途で検索している人」に見つかっているという違いです。
同じ商材群の中でも、ページごとに「誰に、どの言葉で見つかっているか」が違うことが分かりました。これは、ページ単位でコンテンツの見せ方(症状・用途の説明を厚くするか、製品名の指名検索に応える内容にするか)を変える判断材料になります。
分かったこと2:意図しない検索から流入していた可能性
もう1つ見つかったのが、自社ブランド名と字面が重なる海外ブランドの製品名で検索してきているとみられるクリックです。あるページでは、そうした「海外ブランド名に近い言葉」でのクリックを合計すると、自社ブランド名そのものでのクリックを上回っていました。
海外ブランドの製品を探していたユーザーが、名称の一部が似ているために、このページに流入している可能性を示す数字です。クリックされている以上は「流入している」という結果は同じですが、狙って獲得した流入ではありません。この構図に気づかないまま「検索流入が多いので順調」と報告してしまうと、実態とは違う評価になります。
この確認作業が、次にどうつながったか
今回の確認で分かったのは、「ホームより検索の方が多い」という所感自体は正しかったこと、その上で「検索」の中身がページごとに複数の性格に分かれていたこと、そして一部には意図しない流入も混ざっていたことです。担当者への報告では、伸びている・減っているという結果だけでなく、この3点をあわせて伝えました。
肌感覚は、多くの場合現場の実態を正しくとらえています。ただ、その感覚を「なぜそうなっているか」まで分解して確認しないと、次に打つ施策(ページごとのコンテンツ調整、指名検索以外の獲得経路の強化など)を決める材料にはなりません。感覚を数字で裏付ける作業そのものが、KPI設計や分析設計の実務の中心だと感じています。
まとめ
担当者の所感を、GA4のチャネル別流入とサーチコンソールの検索クエリという2つのデータで確認したところ、「検索からの流入が多い」という所感自体は裏付けられました。同時に、検索の中身がページごとに異なること、意図しない流入が混ざっている可能性があることも分かりました。「増えている・減っている」だけで終わらせず、内訳まで見にいく確認作業を、日々の運用の中に組み込んでおくことをおすすめします。
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