「よく聞く数字」を前提にしていませんか?|休眠会員率を自分で集計し直したら、現場の感覚と大きく食い違った話

休眠会員率の感覚値と実測値のズレを検証するアナリストのイラスト

「だいたいこのくらい」という感覚値を、そのまま施策の前提にしてしまったことはないでしょうか。社内で繰り返し語られている数字ほど、誰も出典を確認しないまま定着していきます。

今回ご紹介するのは、専門職向けの会員制サイトを運営する企業で、休眠会員への再アプローチ施策を検討していた際のやり取りです。社内のミーティングでは以前から、「休眠している会員は、全体のだいたい一桁%程度」という数字が共有されていました。誰が最初に言い出したのかは分からないまま、その数字は施策の前提として使われかけていました。

休眠会員への再アプローチは、メールの文面を作り直したり、特典を用意したり、場合によっては電話やダイレクトメールまで使う、手間とコストのかかる施策です。「対象が全体の一桁%」と「対象が全体の4割前後」では、用意すべき体制もかけられる予算も、まったく違う規模になります。数字のとらえ方ひとつで、施策の設計そのものが変わってしまう場面でした。

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「だいたいこの数字」で施策の規模を決めていませんか?

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目次

「一桁%」という数字を、そのまま使うべきか

この数字をもとに、再アプローチ施策の規模や優先度を決めることもできました。ただ、休眠会員向けの施策はコストも時間もかかります。前提にする数字が違えば、組む施策の規模感そのものが変わってしまいます。施策を組む前に、この数字を自分の手元のログデータで検証することにしました。

もし一桁%のまま施策を組んでいたら、どうなっていたでしょうか。対象を少なく見積もった体制で動き出し、ふたを開けてみたら対象が数倍いた、ということになります。再アプローチの優先順位づけやメールの送信枠、問い合わせ対応の見積もりまで、後から総崩れになりかねません。検証にかけた時間は数時間程度でしたが、この手間を惜しまなかったことで、やり直しのコストを避けられたと感じています。

ログデータから、自分で数え直す

会員の最終アクティビティの記録をもとに、一定期間アクティビティがない会員を「休眠」とみなして集計し直しました。会員全体に対する休眠会員の比率を出すと、感覚値として共有されていた一桁%とは大きく異なり、属性別に見ても3割強から5割弱、全体をならすと4割前後という結果になりました。

この数字だけを見ると、集計方法を疑いたくなります。ただ、既存のレポートにあった「アクティブ会員の比率はおよそ6割」という数字と重ね合わせると、ちょうど裏表の関係になっており、整合することが確認できました。集計そのものに大きな誤りがあるわけではなさそうです。

「感覚値」と「実測値」、どれだけ違ったか

同じ「休眠会員率」という言葉でも、前提にした基準で見える数字が変わる

数字の出どころ 休眠会員率
社内で以前から共有されていた感覚値 一桁%程度
ログデータから自分で集計し直した実測値 3割強〜5割弱(ならして4割前後)

ポイント:既存の「アクティブ会員比率はおよそ6割」という指標とは整合しており、集計方法そのものの誤りではないと確認できました。

社内の「感覚値」、最後に検証したのはいつですか?

施策の前提になる数字ほど、出典や定義があいまいなまま使われがちです。30秒Web課題診断で現状を確認できます。

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ズレの正体は「定義」だった

感覚値の一桁%と、実測の4割前後。この差を生んでいたのは、集計方法のミスではなく、「休眠」という言葉の定義でした。一定期間アクティビティがないという比較的緩い基準で見るか、配信停止の一歩手前のような、もっと厳しい基準で見るかによって、同じ会員データからまったく違う数字が出てきます。社内で語られていた一桁%は、もっと厳しい基準を指していたと見るのが自然です。その数字が最初に語られた場の記録をたどれば確定できますが、今回はそこまでは追っていません。

「アクティブユーザー」や「離脱率」といった指標でも、同じことが起きます。直近30日でログインがあれば「アクティブ」とするのか、直近1年まで許容するのか。離脱を「ページを閉じた」と見るのか「次のアクションに進まなかった」と見るのか。言葉そのものは共通でも、定義の置き方によって、出てくる数字は何倍にも変わります。社内で指標の名前だけが共有され、定義までは揺らいでいる、というケースは意外と多いです。

この経験から学んだこと

施策の前提になる数字は、言葉の定義まで含めて、自分で一度計算し直してください。「だいたいこのくらい」という感覚値は、社内で繰り返されるほど検証済みのものだと錯覚しやすくなります。実際には、誰も出典を確認していないことの方が多いです。

休眠会員率に限った話ではありません。KPIを設計する場面では、まず指標の名前を決め、次に数字を追いかけ始めることが多いですが、その指標が「何を基準に、どう定義されているか」を関係者の間で揺らぎなく共有できているかを、先に確認しておく方が近道です。

実務では、使っている主要な指標について、名前・集計の基準・対象期間・算出元のデータを1行でまとめた一覧を持っておくだけで十分です。新しい施策を検討するたびに、その一覧を見返して「この数字は何を基準にしているか」を確認する。手間としては小さいですが、感覚値が前提のまま進んでしまう事態を防げます。

まとめ

休眠会員の比率に限らず、社内でよく聞く数字には、感覚値のまま定着しているものが少なくありません。施策の規模や優先度を決める前に、その数字がどんな定義のもとで計算されたものか、一度自分の手元のデータで確認してみてください。思っていたより数字が動く場面に出会うはずです。

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